人類が4本足から2足歩行するようになったときから腰痛が始まったといわれています。 腰痛は人類の宿命かも知れません。 腰痛の原因や症状も多様でありますが、痛みを解消することと、再発の防止が大切なことです。
腰痛という症状はからだの警報機能であり、それには必ず原因があります。 人が直立2足歩行する時、腰は上半身を支える働きをします。 手を使ってものを持ち上げる時にも、腰には大きな負担がかかります。 また体重が増えても腰への負担が大きくなります。 腰椎骨にはそれをつなぐ靭帯や椎骨間のクッションの役目をする軟骨の椎間板、それに骨を動かす筋肉があります。 この椎間には、脊髄神経が通っていますが、これらの腰部を構成しているどの部分に異常が起きても、腰痛が起こります。
腰椎に関係する骨の機能的な疾患は、骨と関節や筋肉の正常な働きが妨げられるものとして「変形性脊椎症」、骨粗鬆症に伴う腰椎の圧迫骨折」、内臓疾患については、腎臓、肝臓、大腸、胃、膵臓、悪性腫瘍、特に「癌による骨転移」等があります。 「脊柱管狭窄症」では、脊柱管が狭くなって、脊髄や神経が圧迫されて腰痛や歩行障害、坐骨神経痛が起こります。
ほかに慢性関節リウマチや椎間板ヘルニアのように腰椎間の関節の炎症や病変でも腰痛が起こります。 椎間板の中心にはゼリー状の髄核がありますが、その周囲を線維輪という硬い組織が覆っています。問題はその線維輪が破れて髄核が飛び出し、脊髄神経を圧迫することで腰痛が起こります。 特に第4と第5腰椎骨の間か、第5腰椎骨と仙椎骨の間に多く発生します。
これらの疾患は腰痛だけではなく、下肢の神経障害も起し、腰椎部から出る神経の圧迫により、足背部の知覚低下や、拇趾を反り返す力の低下、アキレス腱反射の低下も起します。 咳やくしゃみをしたり、力んだりしただけで、腰痛に止まらず、足の方へも痛みが拡がってきます。
骨や関節や筋肉の機能的な疾患のみならず内臓疾患であっても、慢性的な腰痛は骨格の歪みが見出せます。次にそのタイプを述べてみますが、これらは単独ではなくて、複合的に腰痛を起こしています。
(1)脊柱側湾曲(坐骨神経痛)
まず仙腸関節が亜脱臼を起こし、骨盤から仙骨が傾いて、脊柱全体が左右にS字湾曲した状態になっています。 また、左右の足の長さが違って見えます。 腰椎の捻じれによって神経が圧迫を受けることにより発生する痛みです。特徴は左右の片側に、腰部から臀部にかけて痛みが走ります。 太ももから、ふくらはぎにかけて痛みが出る場合もあります。床に坐っていても、臀部から太ももにかけて痛みが出ます。 ひどくなると、股関節や膝に痛みが出たり、膝関節や足関節の可動が悪くなって日常生活に支障をきたすようにもなります。
(2)腰椎後湾曲(ギックリ腰)
まず仙腸関節が亜脱臼を起こし、骨盤と仙骨の自然な前傾が逆に後傾した状態になっています。 いわゆる「猫背」のことで、肩が前にすぼんでいます。 腰の不快感は重く、鈍痛感があり、腰を叩くと心地よく感じられます。体幹を背屈するのが辛く、坐っていて立ち上がる時、腰が伸ばしにくいと訴えます。 このタイプはギックリ腰になりやすく、またよく繰り返すのが特徴です。
(3)脊柱無湾曲(肩こり・頭痛・めまい)
腰椎に湾曲がなく、背骨もゆるやかなカーブのS字湾曲もない状態になっていて、魚類や両生類のように、ほとんど直線状です。 このタイプは女性に多く、女性らしいボディーラインの丸みがなく、いかり肩になっています。股関節も亜脱臼を起こしていて、前方、後方の転移によってO脚やX脚、内股歩きになりやすいのも特徴です。
(4)腰椎過剰前湾曲(婦人科疾患)
腰椎が過度に前湾している状態で、腰が異常に反って、そのため腹部と臀部が突き出ています。 それによって腰椎部の脊髄神経が圧迫されて、両脚に痛みやしびれが起こります。 生理痛や生理不順にもなりすく慢性的な腰痛に悩まされます。
肩こりは、ひとつの症状であって医学的な病名ではなく、レントゲンでは写りません。首から肩にかけての筋肉が張って筋が硬くなった状態を言い、この筋肉が緊張するような姿勢を続けていると肩凝りが起こります。たとえば長時間にわたるデスクワークは、肩からうなじにかけての部分が緊張し続けて疲れ切ってしまいます。筋肉は疲れると、乳酸と言う疲労物質を発生させるため、休ませて疲れを取り除かなければならないのです。ここで無理を強いると慢性的な疲れとなって、緊張を緩めることができなくなって、肩が凝るわけです。からだだけでなく、目も酷使すれば疲れますが、目をよく使う仕事に携わっていたり、テレビやパソコンなどの画面を長時間見ていると、疲れが増して肩が凝ります。また、眼鏡等の度が合わない場合も目に負担がかかります。肩凝りの原因が、目からきていることも多いようです。
肩凝りと言っても、首を回す程度ですぐ治るものから、腕が上がらない、手が後ろに回せない、めまいがする、耳鳴りがして吐き気がするなど、日常生活に支障をきたすほどの重症を訴えるものまでいろいろとあります。この肩凝りが慢性にになると、この状態が毎日続くことになり、とても耐えられるものではありません。ところが、現代医学ではこれといった治療法がないのです。
人間のからだには脳から脊髄、さらには皮膚、筋肉に至るまで数種類の神経が通っていますが、その神経の途中に何らかの刺激が加わり、筋肉が緊張し続けて充血した状態を「凝り」と呼んでいます。そもそも人間の頭の重さは5~6㎏もあり、それを頸椎だけで支えているのですから、首や肩の筋肉は緊張しやすいのです。全脊髄の中で、前後80度、左右捻転140度という凄い運動量を強いられているのも頸椎です。こんなハードな運動を首の中にある筋肉がいつも強いられているのですから凝りが発生するのは当然と言えます。普通でさえ頸椎に疲労が溜まりやすいのに、その上姿勢が悪ければ全身に悪影響を及ぼして病気になるのは当然です。
また、精神的緊張やストレスが首や肩の筋肉である僧帽筋や棘下筋を収縮させて、そこを通る血管も収縮して血行が悪くなります。すると、エネルギー供給がスムーズにできなくなるのです。筋肉の収縮や鬱血が起こり、疲労物質の乳酸は除去されにくくなって、肩凝りが長く続くことになります。肩凝りの原因を大別すると次のようになります。
(1)内臓の何らかの異常によるもの
肩凝りは内臓の鏡であると言われており、内臓に何らかの病変があれば必ず肩凝りを伴います。逆に肩凝りを放置しておくと健康な内臓にも異常が出てきます。症状としては、内臓器官の病変のある方の肩が凝ってきます。「左肩の凝り」は心臓病や精神不安、「右肩の凝り」は胃・肝臓・胆のう・十二指腸の障害です。
(2)肩の筋肉の血行不良による鬱血
血行不良による肩凝りは、動脈硬化や血管が収縮不足を起こして肩の筋肉が疲労するのが原因です。筋肉が運動するには新しいエネルギー源を運び入れ、溜まっていた疲労物質を運び出す血液の流れが必要です。仕事などで肩を丸め続けたりしての緊張の連続は頸から肩の筋肉をこわばらせて血管を圧迫して血行不良を起こします。こうして筋肉の中に疲労物質が蓄積されて肩凝りが現れるわけです。肩凝りや頸の凝りが慢性化すれば、首筋から肩にかけては頭部の血液循環のターミナルになるので血管が次第に老化し、脳溢血の危険さえ出てきます。
(3)肩自体の疲労による筋肉の凝り
肩関節はからだのどの関節よりも運動の範囲が大きいので、筋肉も疲れやすく消耗します。筋肉が疲れてくると、弾力を失い、ちょっと動かしただけで痛んだり、肩の動きが悪くなります。肩や頸の運動は多くの筋肉の複合運動になっているので、特定の筋肉を酷使すると筋肉群のアンバランス状態が生じます。こうして肩の疲労で筋肉の凝りが起きます。
(4)肩甲骨の動きに関係するその他の関節変位
腕を大きく動かすと、肩甲骨が連動して動くことになるので、この肩甲骨の動きが損なわれたまま腕を動かすと、五十肩や四十肩といわれる肩に痛みが起こります。これは主に肘関節の橈骨や尺骨のずれで起こることが多いのですが、肩関節のずれや脊柱側彎による肋骨下垂、不良姿勢による鎖骨変位などが合わさって起こることも多くあります。