◆操体法の施療について
体法は自力自療という他に類をみない特徴があります。 操体法の臨床は診断も治療も患者さん自身に委ねており、患者さん自身が医療者の立場に立って、患者さん自身人が診断し、治療することになります。 正に自力自療が成立する療法と云えます。 そのような自力自療が可能になるのは、本人にしか分からないからだの感覚を、診断及び治療に生かしているからです。

感覚をからだに聴きわけて、その聴きわけた感覚の中で、快適な感覚でからだを操って、きもちよさを味わうことが操体法で行なう臨床の特徴なのです。 操体法は患者さん自身が快適感覚を味わえるかどうかにかかっています。 操者(操体法指導者)は、診断及び治療に直接的に介入することのできない立場にあって、指導及び補助する立場にあります。 それはいかにして患者さんにきもちよさを聴きわけさせるかがポイントになるのです。

操体法は患者さんにきもちよさでからだを操ってもらうのであって、決してきもちよく動いて治るのではありません。 また、動きながらきもちよさを探すのでもありません。 からだに聴きわけた快適感覚を味わうことによって治癒力を増大させるのです。 この快適感覚には快の質の差(レベル)があり、快感度の質によって治癒力につながります。 治癒力は快適感覚そのものです。

操体法の臨床を具体的に言うと、患者さん自身にからだをゆっくりと操ってもらい、そのゆっくりした動きの中で快・不快の感覚をからだにききわけてもらいます。 そして快感覚が聴きわけられたら、そのきもちよさにからだを委ねて、きもちよさ、心地よさを十分に味わってもらえるよう操者は介助、補助を行っていくのです。 操者(操体法指導者)が治療に関与するわけではありません。

◆操体ヨーガセラピーについて
ヨーガの体位法や調息法等を行なえば、病気が治るというふうに誤解しないでください。 もちろん、ヨーガを行うことで特定の症状や病気において、確かに効果をもたらすものではありますが、ヨーガは対症療法的なものではありません。 ヨーガを行うことによって病気が治り、心身が健康になるのは、さまざまな体位法や調息法等を万遍なく段階的に進めてゆくことで精神、神経、肉体が全身的レベルで次第に調和して統一され、人間に本来備わっている自然治癒力が高まる結果、病気がおのずと消え去るということです。

当院では、そういった症状や疾患のある人が治癒能力を高めてゆくには、やはり快適な感覚を得ることが重要であり、からだの声を聴きながら、からだを操ることが必要であると考えています。 すなわち 「操体ヨーガ」 ともいうべき手法が求められているのだという考え方のもとに、そのような操体的要素を取り入れたヨーガの体位法や調息法等を指導しています。

◆呼吸セミナー
呼吸には肩で息を切る 「肺尖呼吸」 といって空気が一番短い通路を通って肺に入るので、冷たい空気が急に肺尖の方に進むことにより、肺尖カタルを起こしやすくなります。 主に肺尖を使用するために、結核菌などが最も組織の弱い肺尖に付着する機会を多くしてしまうのです。 また、肺病などになりやすいので最もいけない習慣的な呼吸です。

次に胸で息をする 「胸式呼吸」 は息を吸うと胸が拡がって腹が低くなるような仕方の呼吸のことです。 これは肺を横に拡げて、通路の長さを短くすることになるので完全な呼吸とは言えません。

最後に息をすると腹が出るようにする 「腹式呼吸」 がありますが、この呼吸の仕方は横隔膜を動かして腹圧を高め、呼吸面をまんべんなく広くするので良い呼吸と言えます。 腹式呼吸は、腹が出るように呼吸するということで、別名横隔膜呼吸といわれるように、横隔膜が下がってくるので腹が出るのです。 横隔膜が下がると胸の容積が下へ大きくなり、肺底呼吸になります。 肺底の組織は強くできており、使い減りすることはありません。 また息を出す時には、腹皮を縮めて凹ますようにすることで横隔膜が推し上げられてきます。 横隔膜が上がっていくことで肺にある汚れた空気がことごとく充分に外へ出すことができます。

これらの横隔膜の上下運動について、「姿勢」、「呼吸の吐く息と吸う息」、「丹田の力」に関する実践指導について多くの本が書かれており、誰もが他人に教えようとしています。 こういった本の著者や指導者は、酸素の流入が増えることのみの利点を掲げていますが大変危険な要素を含んでいるのです。 特に本を読んだ知識でもって自己流での呼吸運動はやめるべきです。 下腹部の腹圧を高めるのに上腹部にまで圧力をかけると、怒責作用によって胃炎をはじめとする心臓や気管、脳などに悪影響をもたらし、場合によっては心筋梗塞や脳卒中などを招くこともあります。 このような腹式呼吸で下腹部にだけ腹圧を高めるというのは実際のところかなり難しいのです。 しかし、本当に良い呼吸というのは 「胸腹式呼吸」 です。 これは胸と腹が一緒に出て一緒に引っ込んでいく生理的な呼吸のことです。 現代人の多くは胸式呼吸のみでまかなっているので、これに腹式呼吸を身につければ自然に 「胸腹式呼吸」 となります。 こういった胸腹式呼吸に操体的な意識と感覚を使うことで身につけることができるのです。

◆リバーシング(精神療法)
リバーシングとは再誕生という意味です。 アメリカの精神科医レオナード・オルによって発見された呼吸法です。 この呼吸法によって自分の誕生を想い出すことができ、再びその誕生を経験させてくれます。 バース・トラウマという出産時に受ける精神的・肉体的ショックから解放されることによって、潜在意識の中にある誕生時の原初的な苦痛を快へと変質させられる呼吸による療法です。
リバーシングは、エナジーとは何かを知るのに一番手っ取り早い方法であるといえます。 このリバーシングにより、身体が浄化されるので多くの病気の治癒を高めます。また、バース・トラウマにより形づくられた、自分の生活パターンを認識するのに役立ちます。

リバーシングというものの内容に触れますと、この呼吸を発見し、体系化した先駆者であるレオナード・オルはこのように言っています。 『リバーシングは人に呼吸の仕方を教えるものではなく、呼吸そのものから自分で呼吸を学ぶ、直観的で繊細な行為である。 直観に基づくゆるやかなリズムに沿って吸気と呼気をつないでいくうち、魂であり、呼吸の源である内なる呼吸が、空気―外なる呼吸―とひとつに溶け合うのである』と。
リバーシングとはなめらかに流れるような呼吸を長時間、休みなく、途切れることなく持続させる方法であります。 決して息を止めず、ためず、吸気がそのまま呼気につながり、呼気もまた一瞬も間をおかず、そのまま吸気につながってゆくのです。
「吸い込み」と、「吐き出す」動きが互いに自然に流れ込み、ひとつながりとなって、境目のないリズミカルな呼吸の波が続いていく ― そこに呼吸とエネルギーが輪を描いてまわるイメージが生まれてくるのです。 別名 「円環呼吸」 とも言われています。 このようなリバーシングという呼吸法によって、生命エネルギーの強い流れを促し、長年抱えてきた感情的な収縮のパターンを解放へと導いていきます。
